着ることの意義とは {衣装・モデル・ショッピング}

哺乳(ほにゅう)動物の体表面を覆う皮膚は、そのまま気候・環境に適応し、身体防護の機能を果たしているが、ヒトはその進化の過程で、本来の皮膚の機能を失ってしまったのである。

ヒトは、失ってしまった機能を代行させるために、皮膚に近似した衣服という皮膚のコピーをつくり、それを「着る」ことによって目的を達している。

裸のヒトは、まず身体を飾ることから始めた。

それは皮膚に描かれた1本の線であり、あるいは1本の紐(ひも)であったのかもしれない。

とにかく、なんらかのものを身体につけることによって、ヒトは「着る」ことを学んだのである。

いずれにしても「着る」ことは、人類の歩みのなかで、食物やその他の物資を求めて移り住む風土や環境に適応し、身体をさまざまの障害から守ることであり、一方では衣類その他を身につけることによって、自分自身を変身させ、「装い」の世界を形づくることでもあった。

「着る」ことは衣類を身につけたり、身にまとったりすることであり、また広義には物をかぶったり、下半身に衣類をつけたりする際の「はく」なども含まれるが、「着る」働きには物理的環境に即応する一面と、心理的環境に即応する一面とがある。

前者は体温調節と身体防護であり、後者は自己表現のための機能である。

人間の健康な生活は、そのエネルギー産生と環境に応じてのエネルギー交換との間の正しい均衡にあるといわれる。

人間は衣類を「着る」ことによって、人工的に人体と環境との間の均衡を保っている。

つまり、人間は住んでいる気候環境に即して、「着たり」、「脱いだり」して、その環境に適応しているのである。

また物理的環境への対応の一つである身体防護は、動物が運動時に自己の身体の大きさよりも狭い空間を通り抜ける際に、身体に傷害を受けないような皮膚をもっているのに対して、人間は「着る」ことによって、周囲にある突起物に当たっても傷害を受けない、動物のもっている皮膚の代行をさせているのである。

また「着る」ことによって、強い放射線からも身を守っている。
update:2009年08月23日